抱月

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まじなゐ まじなふ 4/19〜26 (24休廊)

嶽啓道「まじなゐまじなふ」

まじない屋きりん堂

2023年4月19日~26日(24日休廊)
12時〜19時(最終日17時)

【嶽啓道のこと、開催に寄せての想い】

いつから始まったのか。その発祥は定かではありません。先人たちが土地の神様を祀り、お詣りしていた秘めやかな場がありました。 そんな、「洞(ほら)」と呼ばれる場をベースに、特定の神社、寺院に属さず、土着の信仰とまじない術法を教え継いだ「嶽啓道」という民俗宗教がありました。女性たちのあいだでのみ継承されたその教えと術法は、御祭神や御本尊といった神仏によらず、いわゆる精霊(お蔭さま)を介し、土地神などと交渉する独自のもので、強い秘匿性をもち、口伝のみで、文字化されることはありませんでした。このため嶽啓道は、世間一般はもとより、研究者の調査も入ることなく、担い手だった「ばあちゃん」たちの高齢化と鬼籍入りにより、多くの人たちに知られることなく、消えゆく運命にあります。私は、奇しき縁により九州のある島に伝わる「洞」の末子となり、嶽啓道の最後の継承者となりました。いまは東京の一隅で細々と、「ばあちゃん」たちから授かった秘伝まじないを有縁の方たちに向けて行じる日々ですが、末子の責任として、せめて嶽啓道の存在をわずかでも世に残したい。「ばあちゃん」たちが生きてきた証を伝えたい。そんな思いで今回、本展を開催することを決めました。

【嶽啓道のまじない符】

それは、文字ではない絵文字といえるものかもしれません。「ばあちゃん」のなかには、目の見えない人、四肢がうまく動かせない人、文字を学んでいない人たちがほとんどでした。そういう環境で生まれ、練り上げられ、継承されてきたまじない符は、文字のような文字でないような、不思議な筆致であらわされます。これらは、施主と術師とのあいだだけで取り交わさたもので、そのほとんどは、作法の流れから燃やされ、川に流され、土に埋められてきました。あるいは家宝として秘され、世間の目に触れることはありませんでした。結果、意味不明の落書きとして捨てられ、忘れられて、今日ほぼ見ることはできなくなりました。今回ご覧いただくまじない符は、秘伝の術式に則って記されたもので、精霊や土地神の姿や動きを模したものです。いわば、良い運気・悪しき障り共にもたらすお蔭さま(精霊)へのメッセージ。お蔭さまを讃え、ねぎらい、元気にはたらいていただくようにうながす一方、障りを和らげ、関係を修復し、ときには封印するはたらきをもちます。それにより、あなたの運気を好転させ、さまざまな災厄を抑えるとともに、本来あるべき理想の環境を生み出すことが可能となるでしょう。つまり、まじない符は私たちをとりまく世界とあなたをつなぎ留める鍵なのです。その存在すら忘れ去られ、消えゆく「ばあちゃん」たちが残した痕跡のひとつが、今回展示・頒布するまじない符です。これらが、皆様とのあらたな縁を育むことになりましたら、これに過ぎる喜びはありません。

(まじない屋・きりん堂/補筆・本田不二雄)

【profile】

まじない屋きりん堂店主、嶽啓道杜頭・麒麟(きりん)
8歳のときに、父親の本籍地である九州のある島で「ばあちゃん」たちと運命的な出会いを果たし、その地に伝わる洞のまじない秘法を皆伝、嶽啓道の薫陶を受け、最後の継承者となる。現在は、有縁の方たちの相談を受け、祓い、鎮め、浄め、拓き(開運)などの秘伝まじないを修法するいっぽう、「占いの世界」東洋呪術・「日本のまじない秘法」(アシェット)の記事監修、月刊「ムー」(ワンパブリッシング)や「マイカレンダー」(説話社)の掲載のほか、InterFM「デイブフロムショー」やSBSラジオ「鉄崎幹人のWASABI」出演のほか、YouTube配信番組の出演など、活躍の場を広げている。